山形県で勤務していたころに、次の勤務先が埼玉県に決まりました。奥さんとその話をしたときに、美味しい日本酒を飲んでいました。そういえば、このお酒「ひこ孫」は埼玉県のお酒だったはず・・・。新しい勤務地と同じ埼玉県の純米酒でした。
日本酒の中でも、醸造アルコールが添加されていないものを純米酒と言います。フルーツジュースの中での果汁100%に近いイメージです。
👉 「純米酒とは何か」はこちら
神亀酒造 元祖純米酒の酒蔵
神亀酒造のお酒との付き合いは20年近くになります。当時飲んでいた一升瓶の一首賭けタグには、「このお酒は人生の機微がわかる35歳以上の人に飲んでもらいたいお酒です」と書かれています。35歳になったばかりころの私は、「若者にはこの味は理解できない」と心の中で自慢げにつぶやいたことを覚えています。
神亀酒造は江戸時代末期の嘉永元年(1848年)創業です。1987年には、仕込む酒のすべてを純米酒に転換し、戦後初の全量純米蔵として有名です。神亀酒造といえば「ひこ孫」が有名ですが、「ひこ孫」とは曽孫の意、三年以上の熟成を経た酒に冠らせる銘柄です。
1964年、京都・伏見の玉乃光酒造は業界に先駆け純米酒を復興し発売しました。純米酒は醸造アルコール添加の酒に比べ1.8倍の米の量が必要でした。
同じころから、埼玉県では蓮田市の神亀酒造がアルコール添加をしない酒造りへの移行を始め、1987年に全量純米酒へ切り替えました。当時はこの意味が評価されず、「最初は一滴も売れなかった」と蔵人が回顧しています。戦後の純米酒の歴史は、神亀酒造により作られたと言っても過言ではありません。
その決断は、流行ではなく、酒造りに対する考え方そのものだったのだと思います
飲んで感じる「骨太さ」と「食中酒」としての完成度
神亀の酒を飲むと、まず感じるのはしっかりとした旨味です
軽やかで華やかなタイプとは対照的で、
どっしりと腰の据わった印象になります
しかし重たいだけではありません
燗をつけることでコハク酸やアミノ酸の旨味がほどけ、
料理と寄り添う表情を見せます
👉 日本酒の旨味についてはこちら「日本酒の味 甘辛、酸度、アミノ酸」
この酒は、
単体で主張するというより、
食事の時間を支える酒なのだと感じます
神亀酒造の酒を飲むという体験
神亀の酒を飲むことは、
単にアルコールを摂取することではありません
そこには、
- 純米酒を選び続けた歴史
- 手間を惜しまない造り
- 食卓を大切にする思想
が、静かに込められているように感じます
一口一口が、
酒蔵の時間と重なっていくような感覚です
小鳥のさえずり
神亀酒造の純米酒は何種類か頂きましたが、多くがコクがあり、濃厚なお酒です。さっぱりしたキレのある「水のごとし」をテーマとした日本酒とは全く異なります。
お酒だけを飲んでも、米とその歩んできた醸造の歴史を感じるができますが、比較的薄味の和食とのハーモニーが最高です。

「小鳥のさえずり」と言えば、早朝に小さな小鳥が道端でちゅんちゅんとさえずっている爽やかなイメージですが、飲んだ印象は「35歳以上のおやじ」です。
甘みも、うまみも、奥深く、まさに濃厚です。常温で飲むと、米と麹の香りが口に広がります。レンジで15秒(おちょこ)のチンにてぬる燗、これはたまりません。
カレイの煮つけが食べたくなります。最後に、ロック、濃厚がゆえにこちらも美味しいです。好みの違いはありそうですが、ロックは口当たりが良く、米の渋さを充分に味わえます。

勝手に日本酒品定め
色は、薄めの琥珀色で、澄んだきらめきがあります。
味は、
甘み 3 うまみ 5 渋み 4 酸味 3 苦み 4 コクボディ 5 (5段階評価)。
香りは、いわゆる古酒の渋い香りがします。更には、秋の味覚である栗の香りがかすかにします。
お供の料理:和食であれば、薄味のものから、濃い味のものでも、なんでも合いそうです。ローストチキンが良く合いそうです。
旨味が多く、コクが強いので、中トロ~大トロのマグロ料理が合いそうです!
👉 天然本マグロ中トロの料理法:バター醤油炒め と 炙り
とらえ方によっては、純米酒は米料理の一つと言えます。米は日本人には昔からとても身近な食材です。米農家の方が日本には多く在籍することから逆算すると、純米酒が趣味という人もたくさんいても良いのでは、と思うのは私だけでしょうか。
お酒のブログというと、ネガティブなイメージになりますが、「純米酒のブログ」とすればちょっとイメージが異なります。純米酒は奥が深いです。一つ一つにこだわれば、ワインと同じくらい奥深いと私は考えています。原材料の産地が多くは日本ということは、多くのお酒の中でもより身近に感じることができそうです。

