仕込みの時間 ― 税理士への道、そのはじまり

お酒 と 思索

盃に注がれた酒は、ただの液体ではありません
そこには、米が育った季節、蔵人の手仕事、そこに至る時間が溶け込んでいます

人の歩みもまた、どこか似ています
すぐに形になるものばかりではなく、遠回りや停滞、時に発酵のような時間を経て、味わいが生まれます

今回記すのは、酒とは直接関係のない話のようでいて、実は「時間と熟成」の物語です
一つの資格を得るまでに重ねた年月、その始まりの記録です


東亜大学大学院 法学専攻(通信制)合格

娘のりんごです。
税理士資格の取得を目指して奮闘中です
税理士試験の税法免除を目指し、東亜大学大学院 法学専攻(通信制)に2021年4月から入学することになりました。

4月からは上京し、会計事務所で働きながら学業との両立が始まります。
生活の変化とともに、覚悟を求められる日々のスタートでした。

東亜大学受験までの経緯

もともとは、税法免除に加えてMBAも取得できる明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科の受験を考えていました。
MBAが取得できること、そして明治というネームバリューに惹かれたためです。

しかし、多くの大学院では出願時に研究計画書の提出が求められます。
私が選んだテーマは「年金に対する相続税と所得税の二重課税」
最高裁まで争われた事例で、関連論文も多く存在していました。

国会図書館のオンライン複写を利用し、論文を取り寄せましたが――
「全く理解できない」

専門知識のない状態では、文章を追うことすら難しい。
この時点で、一度はその道を断念します。

それでも、税法免除の大学院をあきらめたわけではありませんでした。
そこで目に入ったのが、東亜大学大学院 法学専攻(通信制)です。

税法免除が受けられる大学院の中で、日本で唯一の通信制
そのため倍率は毎年3〜4倍と高いものの、出願はまだ間に合いました。

入試は小論文のみ。
ここに照準を合わせ、再び挑戦が始まりました。

受験準備

出願書類とともに、3年分の過去問が送られてきました。
2018年度は会社法、2019年と2020年は民法からの出題。

ただし、東亜大学は「専門知識」よりも、
・正しい日本語
・論理的な構成
・根拠の明示
を重視すると明示しています。

そこでまず取り組んだのは、小論文の「型」を学ぶことでした。
使用した教材は「ゼロから1カ月で受かる 大学入試 小論文のルールブック」

構成の基本を叩き込み、過去問を2年分解き、家族で添削をしてもらいました。
論理が通っているか、不自然な日本語になっていないか、誤字脱字はないか。

なお、会社法などの専門科目の勉強は一切していません。
あくまで「伝える力」に絞った準備でした。

本番では過度な緊張もなく、落ち着いて書き上げることができたようです。
結果発表は約1週間後――無事、合格となりました。


入学後の経緯

ここからは父である私が記します。

娘はその後、結婚し、家庭を持ちました。
出産、育児と続く中で、大学院生活は決して順調とは言えませんでした。

東亜大学では半年ごとに修士論文の審査が行われます。
指導は厳しくも丁寧で、扱うテーマについては専門家と言えるレベルまで求められるようです。

りんごは、結果として
・2回の留年
・1回の休学
を経て、当初の予定より1年半遅れの2024年9月に卒業しました。

20代の女性が、家事や育児に追われ、自身の人生設計が思い通りに進まないことは、日本では決して珍しいことではありません。
その中で、自分の意思を手放さず、目標に向かって歩み続けた姿は、わが子ながら見事でした。

その過程は、どこかお酒の成熟と重なるものがあります。
すぐに形にはならず、時に停滞し、それでも内側では変化が進んでいく・・・

支えてくださった教官の先生方には、深く感謝しているとのことです。


結びに

酒は、仕込みの段階では味わえません
麹が働き、時間が経ち、ようやく一つの酒になります

人の歩みもまた同じで、すぐに結果として現れない時間にこそ意味があります

この物語は、まだ途中に過ぎません
次は、消費税法合格までの記録「火入れの刻」(第2話)です

盃を手に、その続きを辿ってみたいです!

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