日本酒の製造過程

お酒 と 文化
杉玉

日本酒の醸造については、いろいろなところに掲載されていますので、ここで今更と考えましたが、自分の備忘録の意味を含めて記載します。

大まかな流れは以下の図のようになります。

日本酒の特徴は「並行複発酵」と呼ばれる仕組みにあります。これは、麹が米のデンプンを糖に変える働きと、酵母が糖をアルコールに変える働きが同時に進む発酵方式で、世界的にも珍しい醸造技術です。これにより、日本酒はワインやビールよりも高いアルコール度数(15%前後)を自然発酵で実現しています。

精米 ⇒ 蒸し

酒用の米を仕入れますと、その米を精米します。外側の雑味の元となる部分を削り落とします。30%削り落とすと精米歩合は70%となります(精米率は30%)。精米後は水分調整および摩擦で生じた熱を冷ますために3-4週間の時間を置きます(枯らし)。

精米によって削り落とされる部分には、タンパク質や脂質など雑味の原因になる成分が多く含まれています。一方で米の中心部にはデンプンが多く、日本酒造りに適しています。吟醸酒や大吟醸酒ではこの中心部分だけを残すために、精米歩合50%以下まで磨くこともあります。

その後で、米の形が崩れないように洗米し、水分が一定に浸み込むように配慮しながら浸漬します。「蒸きょう」と呼ばれる米を蒸す工程に入ります。

米は炊かずに、蒸します。炊いた米は水分約65%ですが、蒸した米は水分約35%です。麹菌の繁殖には水分量35-40%が適切とされます。

蒸し米は「外側は硬く、内側は柔らかい」という状態が理想とされます。この状態にすることで、麹菌が内部まで菌糸を伸ばしやすくなります。

麹作り

蒸しの作業を終えたら、蒸し米の一部を取り出して、30℃くらいに冷まして麹を作ります。

室温が30-35℃、湿度50-60%に調整された麹室で蒸し米と種麹を数日かけて、「麹」をつくります。使用する白米全体の約1/4を使います。

酒造りには「一麹二酛三造り」と言われています。酒造りのメインイベントの始まりです。

麹作り

麹菌は米の中に入り込み、デンプンを分解する酵素(アミラーゼなど)を作ります。この酵素が後の工程で糖を生み出し、酵母の栄養源になります。日本酒の味わいの個性は、この麹づくりの出来によって大きく左右されるため、杜氏や蔵人が最も神経を使う工程の一つと言われています。

酒母(しゅぼ)作り

次に酒母(酛、もと)を作ります。材料は、「米麹:蒸し米:仕込み水=1:4:6」で配合します。発酵の主役となる酵母を大量に増やす工程です。酒母の役割は所定濃度の乳酸を含み、健全な酵母を育成することにあります。

空気中には日本酒造りの弊害になる野生酵母や雑菌が漂いますが、それらが増えないように乳酸で駆逐します。その乳酸を天然の乳酸の増加を待つ生酛、仕込み初期に乳酸を加える速醸酛があります。速醸酛は10日前後、生酛と山廃酛は20日以上の時間を要します。

生酛や山廃酛では、乳酸菌が自然に増殖して乳酸を作るため、時間と手間がかかりますが、複雑で奥行きのある味わいになると言われています。一方、速醸酛は近代的な方法で、安定した酒造りを可能にしました。

酒母に使用する白米は全体の約7%程度とされ、醪(もろみ)の段階では酒母は10倍以上に薄まります。

醪(もろみ)造り

もろみ造り(三段仕込み)は、酒造りのメインとなる部分で、室町時代からの伝統技術です。現在でも、類似の製法が行われています。

初日
①最初に酒母を投入
②酒母の2倍の「米麹と蒸し米と仕込み水」を加える 初添
2日目休み 踊り
3日目
できた酒母の2倍の「米麹と蒸し米と仕込み水」を加える 仲添
4日目
できた酒母の2倍の「米麹と蒸し米と仕込み水」を加える 留添

三段仕込みは、酵母の活動を安定させながら発酵を進めるための日本酒独特の方法です。もし最初から大量の原料を加えると酵母が弱ってしまうため、三回に分けて仕込むことで酵母の増殖と発酵を安定させます。

それぞれの段階で、適切な温度が決まっています
特に醪発酵の段階では、麹によるデンプン⇒糖への分解 と 酵母による糖⇒アルコールへの発酵が同時に進行しており、6~20℃程度の低温での厳密な管理が必要です
雑菌予防の側面もあります
これが日本酒醸造に南限がある理由です

上槽(じょうそう) ⇒ 火入れ

上槽とは、醪(もろみ)を搾り、新酒(生酒)と酒粕に分ける工程です。自動圧搾機を利用することが多いですが、大吟醸酒などの高級酒は、袋に入れて重力だけを頼りに自然に搾ったものだけを利用することもあります。これを「袋吊り(袋搾り)」と呼び、苦みが極めて少ない良質のお酒になると言われています。

絞られた原酒は、さらに濾過、殺菌(火入れ)、貯蔵、瓶詰めされて商品になります。
👉 「火入れの作業とパスツール」はこちら

上槽されたお酒は、酒のなかに残存する微細な固形物を濾過します。さらには粉末の活性炭を使用して、余計な色や雑味を除去します。この活性炭の量が多いと味も素っ気もない、深みのないお酒になってしまいます。
👉 日本酒の旨味についてはこちら「日本酒の味 甘辛、酸度、アミノ酸」

一般的な日本酒は品質を安定させるために「火入れ」と呼ばれる加熱殺菌を二回行います。一度目は上槽後、二度目は瓶詰め前に行うことが多く、これにより微生物の活動を止めて品質を保ちます。火入れをしないものは「生酒」と呼ばれ、フレッシュな香味が特徴です。

日本酒という文化

店頭に並ぶまでに、多くのステップを踏んでいることを再認識しました。
ビンを眺めると愛おしく感じるようになりました!
(趣味の域を超えたかもです)

「日本酒、純米酒、美味しいお酒」はこちら

日本酒の醸造工程をあらためて追いかけてみると、一杯の酒の中にどれほどの手間と時間、そして先人たちの知恵が積み重なっているかに気づかされます。精米、麹づくり、酒母、三段仕込み、上槽、火入れ・・・、その一つひとつが、日本の風土と向き合いながら磨かれてきた伝統技術です。日本酒は、日本古来の文化そのものだと思います。冬の寒さを味方につけ、微生物と対話しながら醸す営みは、まさに自然との共生の結晶です。

こうした背景を知ったうえで盃を傾けると、味わいは一段と深くなります。それは「飲む」という行為を超えて、文化を味わう時間になります。

日本酒造りは、現在でも多くの蔵で冬を中心に行われています。これは「寒造り(かんづくり)」と呼ばれ、日本の酒造りの伝統的なスタイルです。冬は気温が低いため雑菌が繁殖しにくく、発酵をゆっくり安定して進めることができます。特に醪の発酵では低温管理が重要で、寒い季節の方が香りや味わいのバランスが整いやすいと言われています。また、昔は農家が冬の農閑期に蔵人として酒造りに参加することも多く、自然条件と人の営みの両方が重なって、冬の酒造りという文化が定着しました。

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