お酒と音楽を愛する人へ
ウイスキーは年月を経るほど、味わいはまろやかになり、香りは丸く広がります。
ワインもまた、適切に保存されれば時間は劣化ではなく、熟成として現れます。
日本酒にも「古酒」という世界があります。とくに旨味のしっかりした純米酒は、時間とともに深みを増し、静かな余韻を残します。
そんな「時間が育てる価値」は、楽器にもあるのではないか。
そう感じたのが、今回の比較のきっかけです。
2023年に購入した約40年前製造のA-500と、現行モデルのA-WO20。
同じメーカーでありながら、40年という時間を隔てた2本を、じっくりと比べてみました。
外観と素材の違い
A-500はイエローブラスの、明るく澄んだ金色。
A-WO20はブロンズブラスの、やや赤みを帯びた落ち着いた輝きです。
どちらも状態は良く、それぞれに異なる美しさがあります。
長く使われてきた楽器と、新しく作られた楽器。時間の違いが、そのまま表情の違いとして現れているように感じます。
ネックの構造と重量
A-500のネックはイエローブラス一体。
一方A-WO20は、管体がブロンズブラス、キーや補強部にイエローブラスが使われています。
太い棒1本のオクターブキーのA-500(A-WO10と同じ形)、細い棒2本のオクターブキーであるA-WO20は、見た目が大きく異なります。
重量は
- A-500:114g
- A-WO20:105g

意外にも、ヘビータイプとされるA-WO20の方が軽量です。
管体の重量と取り回し
全体重量(0.05kg単位、マウスピースは含まず)は
- A-500:2.45kg
- A-WO20:2.65kg
A-WO20の方が約200g重く、この差は実際に持つと無視できません。
特に長時間の演奏では、身体への負担として確かに感じます。
ダブルアーム構造と堅牢性
LOW C、LOW B keyのカップにダブルーアームkeyを採用するなど、頑強さにこだわっているのが伝わってきます(下写真)。頻繁に使う大きなキーの耐久性を高める設計です。

複数箇所で補強が施されており、現代のモデルは「長く安定して使う」ことを強く意識していることが伝わります。
キーの形状と操作感
EとFのキーに限ったことではありませんが、指貝の形がかなり異なります。A-WO20の方が窪みが大きく、指にfitする感覚が強いです(写真でわかりますでしょうか?)。
table key以外の全ての指貝に共通です。

経年劣化なのか、A-500の方がほんのりと赤みがかっているようです。触り心地は変わりません。素材というより、「時間」がもたらした変化のようにも感じられます。
左手テーブルキー left hand talbe key
左手のテーブルキーは、左手の小指で押すキーのことです。

レイアウトはあまり変わりありませんが、LowC#を押す感覚が微妙に異なります。良いか、悪いかはわかりませんが、勝手が違うので、少し戸惑います。
G#はA-WO20は指貝のキーになっています。ちょっとだけオシャレになっています。
右手テーブルキー right hand table key
右手のテーブルキーは、右手の小指で押すキーのことです。

本体に対して、角度が少し変化しています。が、感覚としては大きな違いは感じません。
音の違いについて
音の違いを言葉にするのは難しいですが、
A-WO20はやや深みと太さが増した印象があります。
ただし、同じヤナギサワということもあり、
劇的な差というよりは「方向性の違い」に近いものです。
40年という時間が示すもの
40年の製造差がありながら、大きな違いを感じない。
これは「進化が小さい」のではなく、
40年前の時点ですでに完成度が高かった
とも言えるのではないでしょうか。
日本の職人技の積み重ねを、実感する瞬間でした。
お酒と楽器に共通するもの
ウイスキーやワインと同じように、
日本酒にも時間が育てる味わいがあります。
とくに純米酒は、熟成によって旨味が増し、奥行きのある香りへと変化します。
楽器もまた、丁寧に扱われてきたものであれば、
新しいものと同等、あるいはそれ以上の響きを持つことがあります。
時間は劣化ではなく、価値になることがある
古いサックスと向き合いながら、そんなことを感じました。
まとめ
A-500とA-WO20
どちらが優れているかは簡単には決められません。
堅牢性を高めた現代の設計。
時間を経て円熟した個体の魅力。
そのどちらにも価値があり、
そしてどちらも「人の手によって育てられてきたもの」です。
盃を傾けながら、ゆっくりと音を出す。
そんな時間もまた、ひとつの豊かさだと思います。
古酒については、こちらに解説しています
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