以前の記事で、ヒトの生態考察として「手のしびれ」を取り上げました。今回も自分自身の体験から、尿酸値について考察してみます。
👉 睡眠中の手のしびれ…原因は手根管症候群だった話
血液中の尿酸値が高いと指摘されたのは20歳台後半のころです。
でも、糖尿病と同じで「何か症状」がなければ、健康診断の結果はチラ見しただけで、なんの行動変化ももたらしません!
初めての痛風発作
30歳台後半のある朝、左足の踵に激痛を感じました。何事が起ったかと思いました。
その前日にいつもよりも多めに飲酒したこともあり、酔っぱらって足を挫いたか、と思いました。
でも、踵を挫くかしら?
この痛みが数日後には改善しました。
父親が足の親指付け根に痛風発作が度々生じていたことを思い出しました。
これが痛風発作、まさか・・・
しかしながら、痛風ということになると、長い長い節酒~禁酒生活になると思われ、自分では「これは痛風ではない」と根拠なく言い聞かせました。
アキレス腱付着部炎?
そんなときに、知り合いのベテラン整形外科とお話する機会があり、踵痛のことを相談すると診断は「アキレス腱付着部炎疑い」と。少し前にキックスケーターで踵を痛めたことがあったからです。
(この整形外科の先生には、「普段から尿酸が高いこと」と「前日の多めの飲酒のこと」は秘密にしていました。ごめんなさい!)
でもその数か月後に、再び同じ痛みが自分を襲います。
それも同じく、多めの飲酒の翌日に!
やはり、この踵の痛みは痛風発作という結論にせざるを得ないと考えました。

今から考えると初めの踵痛は「痛風発作」以外の何物でもないのですが、別の診断をくれた整形外科の先生は、(全てを理解したうえで)私への優しさから逃げ道を用意してくれたのかもしれません。
痛風発作とは
日本人の高尿酸血症は成人男性の約30%とされ、痛風発作は同じく成人男性の1~1.5%に見られます。食事、生活習慣の影響もありますが、遺伝的要因の影響も強いです。私の場合は、父親からの遺伝と食事・飲酒生活が影響していると考えられます。
痛風発作は足関節に発症することが多く、特に母趾中足趾節関節(いわゆる足の親指の付け根)が典型的です。ただし踵に発症することもあります。初回発作は診断が容易でないこともあります。
痛風発作は、関節内に尿酸塩結晶が沈着し、それを異物として免疫が反応することで炎症が起きる病気です。発作時は「風が吹いても痛い」と言われるほど強い痛みになることがあります
更には知り合いで「痛風であると診断されることに否定的」で、「高尿酸血症であることを隠蔽する人」への診断は難しいのかもしれません。
数回の発作の後、フェブリク® 20mg/dayを内服開始となり、その後発作が生じていません。
一般に、痛風発作の予防では尿酸値を長期的にコントロールすることが重要で、治療目標は「血清尿酸値6.0mg/dL未満」とされることが多いです。6.0以下を2年維持すると、身体に溜まっていた関節内の尿酸結晶がほぼなくなるとのことです。
アルコールと尿酸値
アルコールが体内の尿酸値を上昇させるメカニズムは複数存在します。
① アルコールは体内のエネルギー源であるATPを分解し、プリン体を生成します。そのプリン体が尿酸として体内に残留
② 大量飲酒により乳酸が上昇し、腎臓における尿酸の再吸収が促進
③ 抗利尿ホルモンの分泌抑制により多尿をきたし、脱水傾向になり、尿酸排泄が抑制
④ 飲酒時にプリン体を多く含む食べ物を食べがち(レバー、肉、白子、いくら、いわしなど)
プリン体の多いビールなどのお酒が悪いという考えもありますが、その影響は限定的で、アルコールそのものによる排泄障害の影響の方が強い場合が多いようです。特に、アルコール濃度の高いお酒は翌日に脱水傾向になることがあるので、注意が必要です。
また、果糖(フルクトース)を多く含む清涼飲料水や酎ハイなどの甘いお酒も尿酸値を上げやすいことが知られています。アルコールだけでなく「糖分の多い飲み物」も意外な落とし穴です。
久しぶりの再発
コロナ禍のこともあり、2021年の年末に数年ぶりに実家に帰省しました。
発作なしの期間が続いていたこともあり、フェブリク®は(本来は毎日内服ですが)週に数回飲む程度のダメ患者の状態でした。
数日間の豪華な食事と飲酒の後、左踵痛が・・・。
実家では隠していましたが、宮崎に戻るとすぐに奥さんから「足痛いの?」と指摘されました(鋭い!)。観念し、実家での肉食を報告し、懺悔します。
痛みは軽度だったこともあり、フェブリク®の再開としました。
痛みが残っている間にフェブリク®内服を開始すべきかどうかについては、議論の分かれるところのようです。内服により、血中尿酸値が下がり、関節内の尿酸結晶脱落(痛風発作の原因)を助長する可能性があるからです。今回は軽症だったこともあり、自己判断で再開としました。
フェブリクの効果は、数時間後から発現し、6時間程度である程度プラトーになり、その後は1日以上継続します。
フェブリク内服を数日以上忘れた段階での飲酒時は、飲酒少し前にフェブリク内服すれば尿酸値の変動はある程度抑えられると予測されます。
一般に、尿酸降下薬は「発作が起きたときに飲む薬」ではなく、尿酸値を安定させるために継続する薬です。自己判断で中断や再開を繰り返すと尿酸値が変動し、かえって発作の誘因になることがあると言われています。ご注意を!
経験からの考察
人生の中で10回以内ですが、痛風発作を耐えてきた経験からの考察を記載します(印象です・・・)。
痛風発作に関して、アルコール度の高いお酒を多めに飲むことが大きな誘因となります。
ビールなどのアルコールによるプリン体増加よりも、排泄障害と脱水の方が影響が強い印象です。アルコール濃度が高いお酒を飲んだあとに限って発作が生じます。
肉摂取量の影響も強いように感じます。食事の影響も大きいです。
古傷があるところに生じやすいのかもしれません。私の場合はいつも左足踵で、それ以外の部位には発作1回のみです。
最後に、処方された薬はきちんと内服しましょう!これが一番重要かもしれません・・・
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
参考文献
金子ら. 痛風と核酸代謝 2017
Zhang et al. Exp Therapeu Med 2014
森脇ら. Gout Uric Nuxl Acid 2019
今回あらためて感じたのは、「病気」というものも、結局は自分の身体に起きている現象であり、ひとつの“生態”なのだということです。もちろん痛風発作そのものは勘弁してほしいのですが、なぜ起きたのか、何が引き金になったのか、どうすれば防げるのかを考えているうちに、いつの間にか観察対象になっていました。
思えば、キリンの生態を調べて面白がっていたのと同じように、ヒトの身体もまた不思議に満ちています。日々の暮らしの中で起きる出来事を、ただ「つらかった」で終わらせず、少し距離を置いて眺めてみる。そこから学びや発見を拾い上げる。
お酒が関連する病気であることは間違いなさそうです。お酒を飲むときは適切な量に制限することが重要です。

