キリンは首は長いですが、脳の重さ・機能はどうなのでしょうか?
実はヒトよりも頭の機能が良かったりするのでしょうか?
キリンは首が他の偶蹄目(ウシ、シカ、ラクダ、イノシシなど、四肢の指が偶数で、それぞれの指に蹄を持つ)よりも極端に長いので、中枢神経も何か特徴があるのではないかと推測されていました。
2007年に南アフリカとスウェーデンの研究グループにより、キリンの中枢神経系を調べた論文が発表されています [Badlangana, 2007]。
中枢神経系の構造
この論文では、3頭の大人のオスキリンの分析がされています。結果は、他の偶蹄目とほぼ同じというものでした。キリンの一次運動野*は大型のBetz細胞**という錐体細胞から神経線維が伸びており、キリンの場合は最大2.6mにも及びます。この構造自体は人間も含めて、多くの哺乳類と同じです。脊髄の太さについては、10-15mm程度で、ヒトよりもやや太いようですが、構造自体は大きな違いはありません [Badlangana, 2007]。首が長いことはあまり影響してないとの結論でした。
* 一次運動野とは、手足の筋肉に直接関係する大脳皮質の部位です。大脳一次運動野 → 脊髄前角細胞 → 末梢神経 → 筋肉が動く、という流れになります。
** Betz細胞とは、一次運動野に存在する大きめの神経細胞で、大脳皮質から脊髄を下行する長い神経線維を持します。
脳の大きさ ヒトの約半分
脳の大きさについては、Graicら [2017]がまとめています。この中で、大人のキリン10頭の分析で、平均体重 846kgのキリンにおいて、平均脳重量は720gでした。ちなみにヒトは成人男性は1400g程度とされております。キリンよりもヒトの脳の方が大きいです。
脳化指数(encephalization quotient; EQ)という数字があります。[EQ] = [定数] × [脳の重量] ÷ [体重]2/3 で表示され、脳の重量を比較する際において、体の大きさの違いを補正します。ヒトは7.5前後と大きいです。キリンは0.64とヒトよりも随分小さいですが、他の鯨偶蹄目とほぼ同じ数字になります。
一次運動野の位置
キリンの一次運動野は頭のてっぺんに近い部位に限局して位置します。これは馬とほぼ同じです。

ヒトでは、頭のてっぺんから側頭部に長く広がります。横の方に広がった部位は、手先や口を動かす部位に相当しますので、ヒトが手先、口(言葉を発すること)を発達させてきたことと関係するのかもしれません。
キリンの首はとても長いですが、中枢神経の構造は他の哺乳類とあまり変わらないようです。いろいろと調べてみると、キリンをより身近に感じることができました!
キリンの首が長い理由は餌を食べやすいという意味以外に、オス同士の争いのネッキングが関係していると言われています。
👉 「キリンのネッキング ~オス同士の戦い~」はこちら
文献
Badlangana NL, et al. Observations on the giraffe central nervous system related to the corticospinal tract, motor cortex and spinal cord: what difference does a long neck make? Neuroscience 2007, 148, 522-534
Graic JM, et al. The brain of the giraffe (Giraffa Camelopardalis): surface configuration, encephalization quotient, and analysis of the existing literature. Anatonical Rec 2017, 300, 1502-1511
中学生のころの理科の授業で、ヒトは他の動物に比べて脳の比率が大きいと習った記憶があります。そんな記憶から、キリンの脳ってどんな感じなのだろうか、と疑問に感じたのが上記の記事の始まりです。誰にも強要されるでもなく、誰かのためでもなく、自分が興味を持ったことを調べて、自分なりに解釈する、とても幸せな作業でした。
キリンの脳はアルコールにどんな反応をするのだろうか、キリンが酔っぱらったらヒトと同じように千鳥足になるのだろうか、などいろいろなことを思索してしまいます。楽しい空想です。

